漢方内科
漢方内科
漢方内科は、主に漢方薬を使用して、様々な症状や病気を治療する診療科です。漢方医学は、西洋医学と異なる診断や治療の枠組みを持っているために、通常の血液検査や画像検査で診断がつかなかったり、現代医学の治療だけでは改善しにくかったりする症状でも、漢方薬のアプローチで奏功することが少なくありません。
また、漢方治療は症状の緩和を第一の目的としますが、心身のバランスの乱れが病気に発展していくという「未病」の考え方があり、この未病の段階で生活習慣の改善や漢方治療を行い、病気を回避していくという予防医学の側面もあります。
漢方治療は内科、皮膚科、小児科、婦人科など、診療科目は関係なく全ての身体症状を対象としています。症状があっても西洋医学的に原因がはっきりしない、西洋医学的な治療で症状が改善しないなど、お悩みがある方はぜひ一度ご相談ください。
西洋医学は体の異常を臓器から細胞、分子レベルへと細分化して治療を行います。それに対し、東洋医学では病気を体全体の異常として捉えます。西洋医学では局所の異常に対して治療を行いますが、東洋医学では色んな臓器の様々な異常に対して総合的に治療を行います。
様々な疾患に対して1種類から数種類の漢方薬で治療を行います。このように概念の異なる西洋医学と東洋医学の治療を併用することで、一人の患者様に対して必要な薬の種類が減り、体調はなお良くなるということは稀ではありません。西洋医学にはない、漢方治療の優れた点は、自律神経の乱れを治療すること、温めること、冷ますこと、血流を良くすることなどです。
自律神経は交感神経を活発にすることで感染症と闘い、副交感神経を活発にすることでストレスによる症状を軽減することもできます。冷ます作用のある漢方薬で炎症を鎮静化し、温める作用のある漢方薬で様々な機能を改善し、血流を良くする漢方薬で臓器障害を改善します。現代医学では、まだ漢方で述べる病態と薬の作用について解明するに至っていないと言えるでしょう。
漢方薬は、大きく2種類に分けられます。一つは生薬を自ら煮出した煎じ薬で、二つ目は煮出した薬液をインスタントコーヒーのように粉末にしたエキス剤です。エキス剤は携帯しやすく手軽に飲めるという利点があります。他方、煎じ薬は手間がかかるものの香りが強く、味はエキス剤と多少異なります。
薬効も煎じ薬の方がエキス剤よりも強力です。生薬の中には揮発性有効成分が含まれるため、長く煎じると薬液中の濃度が下がってしまいます。煎じ薬では揮発しやすい成分を含む生薬を最後の数分だけ煎じるという工夫(後煎)ができるため、有効成分を極力逃さずに飲むことができます。
さらに、煎じ薬では生薬を患者様一人一人の病状に合わせて量を増やしたり減らしたり、新たに種類を加えることができます。オーダーメイド治療が行えるのが煎じ薬の良いところです。当院での煎じ薬による治療は健康保険の適応があります。治療の内容にもよりますが、エキス剤と比べて高額であるということはありません。現代医学的な新しい薬剤と比べるとむしろ安価です。
煎じ薬を処方する医療機関は全国的にも非常に少ないのが現状です。医師側からすると、煎じ薬に関するトレーニングを受ける機会にはなかなか巡り会いません。当院の医師は漢方教育機関にて煎じ薬処方を含むトレーニング修了しています。煎じ薬での治療をご希望の方はぜひ一度ご相談ください。
漢方内科の診察は、お悩みの症状と生活習慣(食事内容や排泄など)について詳しくうかがい、東洋医学的なアプローチによって、身体や心の状態のバランスの乱れや改善点を見つけます。
そして症状とバランスの乱れとの因果関係を考え、その状態を改善する漢方薬を処方します。また、症状に悪影響を及ぼしている可能性のある生活習慣があれば、改善に向けた生活指導もさせていただきます。
上記の症状に心当たりがある場合や気になることがございましたら、何でもお気軽にご相談ください。
※症状・経過に応じて、漢方治療に先立って専門の診療科で精密検査をお勧めすることがあります。
肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧症の複合病態であるメタボリックシンドロームは、集積して存在すると生活習慣病としての危険性が高まり、ときに重大な合併症を引き起こし、死に至る場合もあります。
一方で、メタボリックシンドロームは可逆性という一面も有しています。判定基準により判定し、早期から未病の段階で治療介入ができれば、動脈硬化性疾患に発展する危険性は大幅に減少する可能性があります。
メタボリックシンドロームへの対処は、食事療法、運動療法、ストレスの軽減を目的とした生活が基本になりますが、この段階での漢方薬の使用は肥満の改善を目的とします。次いで循環障害の改善を目的とした漢方薬も必要となります。
消化管の運動が亢進すると下痢になります。この運動亢進が起こっている原因には、ノロウイルスを代表する感染性腸炎、感染を伴わない炎症性腸疾患、冷えに伴う下痢、ストレスに伴う腹部膨満と下痢などがあります。漢方では下痢という症状に対してではなく、その原因に対する治療を行います。
食道の運動が低下すると喉の閉塞感を自覚することがありますし、胃の運動が低下するとゲップや早期飽満感(すぐ満腹になる)、食欲不振や胃痛となります。腸の運動が低下すると便秘になってしまいます。それらの異常の原因には、炎症、自律神経失調、感染後の症状、血流障害などが考えられます。漢方医学的に診断することで治療を行います。
食べること、食べたものを消化することができなくなると虚弱となります。慢性疾患で消耗した状態の改善や急性疾患の病後で一時的に体力が低下している時に漢方治療を行い、体力回復を期待します。
突然、周囲がぐるぐる回り、吐き気や耳鳴りを伴う回転性のめまいや急に立ち上がったり、ある方向を振り向いたりしたときにクラッとするめまいには、それぞれの症状に適応する漢方があります。肩こりや頭痛を伴うことも多く、雨降り前などの気圧が低下するときに特に症状が悪化することがあります。受診の際にはどのような症状なのかを詳しくお伝えください。
更年期障害は、あきらかな原因が見当たらないのに「あちらこちら具合が悪い」という症状の訴えが多く、のぼせや動悸、発汗、めまいなど自律神経失調症と密接な関係があるといわれています。
現代の生理学では、直接的要因を女性ホルモンの減少として、ホルモン補充療法が行われます。一方、漢方治療では、症状悪化の要素として冷えや血の巡りの問題があると考えます。女性ホルモンの低下は自然の摂理と考え、この変化による不快な症状を緩和するために症状に応じて漢方薬で対処します。
気分の落ち込み、イライラなどの気分障害のほか、噯気(げっぷ)、ため息、過敏性腸症候群、慢性下痢、便秘などはストレスと関係がある心身症の可能性があります。
心身がストレスに影響され自律神経が乱れ、交感神経や副交感神経の症状が自覚症状として現れます。漢方薬には、自律神経の乱れを正すとともに、それに伴って起こる自覚症状を改善する生薬が含まれています。
不眠症の薬物療法で主流になっている睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)は即効性があり、確実な効果が期待できます。一方、睡眠薬の副作用や依存性に不安を持たれている方や、服用に対して罪の意識を持つ方さえいらっしゃいます。
こうした背景から、睡眠薬の減量・離脱を目的に漢方薬を併用するケースや、漢方薬のみを希望する方が徐々に増えています。近年、不眠に対する漢方治療の必要性が高まっています。漢方では自律神経のバランスを整えたり、睡眠の質を改善したり、不安を軽減することにより不眠を改善します。
皮脂分泌が盛んな毛穴にアクネ杆菌(かんきん)が繁殖して化膿する病態がにきびです。現代医学では外用薬による治療が主体となりますが、重症の場合は殺菌を目的として抗生物質が使われることもあります。
実際には月経周期に合わせてにきびが悪化することが多いです。漢方治療では、にきびができにくいように月経の問題を改善させたり、化膿している部位の排膿を促し、皮膚の炎症を鎮静化することで治療します。
尿路の不定愁訴は頻尿、尿漏れ、残尿感、排尿痛、下腹部痛など多彩な症状があるにもかかわらず、器質的な障害が認められません。このような際、西洋医学では精神安定剤などが用いられますが、症状の改善が得られない場合、漢方治療が適します。
漢方医学では尿路の不定愁訴を一種の機能障害と解釈して、全身症状も考慮しながら適応する漢方薬を選択します。
超高齢化社会が進む中、後期高齢者の病態としてフレイルやその原因となるサルコペニア(筋肉量が減少すること病態)が注目されています。
フレイルは「虚弱」などを意味する「Frailty」が語源であり、足腰の筋力が低下し、疲れやすい、やる気が出ない、食欲がないなどの症状がみられる状態をいいます。漢方にはこれらの症状を総合的に改善させるものもあります。
精密検査を重ねても明らかな異常がないが、自覚症状はある状態で困る患者様がいらっしゃいます。漢方医学的に診察をすると、①複数の異常を合併していることがあります。
また、②ある一つの異常に対して身体が二次的に反応し、その二次反応が自覚症状として強く出ていることもあります。更には、①や②が長期化することで身体が疲弊し、強い冷えの状態に至ってしまっていることもあります。諦める前に一度ご相談ください。
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